生存術教書 How To Survive (サバイバル技術アーカイブズ)

野外活動関連参考事項

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冬季における野外でのサバイバル術

無保証!(以下の方法を試す前に、あなたの体質を知る医者に相談すること!以下の方法で何らかの損害が生じても責任を負わない。)

迷ったり目的地到達不能であれば早めにフォーストビバークを決定する
吹雪の中で移動するのは避ける
シェルター(雪洞)設営は換気にも留意(一酸化中毒)

予防と準備

積雪期もカバーする山岳保険
天候予測
余裕ある周到な移動計画(無理な行程を避ける)(登山計画書提出)
靴手入れと衣服のレイヤード(ウール又はPP系下着、靴下と防風アウター)
非常食、予備食(塩分糖分を含む高カロリー食と水の凍結防止)
単独行動を避ける(バディによる早期兆候発見)
ツェルト、エマージェンシーブランケット等携行
メタ、ストーブ、ライターとマッチ(非喫煙者も)等のメンテと携行

凍傷(frostbite)、低体温症(hypothermia)等

以下の方法を自信をもってお薦めすることは出来ないが

濡れた手袋や靴下の交換
金属に直接触れない(くっつく)
用具の手入れやシェルターの手直しによって意識、思考の維持
全身と手足の指先や顔面をこまめに動かし血行維持(靴、衣服はゆったり)(既に凍傷や重度の低体温症に陥っている場合は絶対安静)
首から上の保温(全身の保温に大きく関わる)
熱量の維持(高カロリー食をこまめに摂取)(禁アルコール=体温低下、脱水)(カフェインも摂取してはならない)
首の後ろ、脇の下、腰、鼠頚部を暖めると楽
湯で暖める(感覚が鈍いので火傷に注意)
雪盲は額から目にかけて冷やす
尿量やその日の摂取量から判断して水分摂取(水分不足は凍傷を招く)

補足 凍傷の治療

凍傷を一度加温して溶解した組織はもろいので、以後の行動は避けたい。

従って凍傷は、山小屋等の保温と安静を保てる場所に移動してから治療を始めることが出来るならそれが望ましい。当然、遭難中であるならこの方法は採れない。天候の回復を待って山小屋に移動し治療を始めるか、ビバーク中のテントで治療を始めるかは状況(傷の程度、天候、場所)次第。しかし国内では、早急に加温治療の後、患部を厳重に保護し、天候の回復を待って移動するというのがベターかもしれない。

尚、加温に使用する湯の温度は40度弱。患部を浸すとすぐに温度が低下するので、注ぎ足せるよう充分な量を用意する。四肢の末端部のみを急速に加温すると低温の血液が心臓へ一気に流れ込む可能性がある。患部が広範囲に渡る場合は全身を加温する必要がある。

感染症にも注意(消毒、ガーゼと包帯)。

冬山参考書籍

http://sos.s101.xrea.com/029800.htm
登山の医学 J.A.ウィルカーソン著 東京新聞出版局
登山の医学ハンドブック 松林公蔵監 日本登山医学研究会編 杏林書院
冬山 近藤和美著 山と渓谷社

関連用語

ビバーク(bivouac)
予定露営(フォーカストビバーク)と不時露営(フォーストビバーク)があるが、単にビバークと言えば一般に予定外の露営を指すことが多いだろう。

毒蛇咬傷

無保証!(以下の方法を試す前に、あなたの体質を知る医者に相談すること!以下の方法で何らかの損害が生じても責任を負わない。)

予防

蛇の多い地域で蛇を避けるには、蛇の牙を通さないブーツやズボンを履く。少し専門的なアウトドアショップへ行けば見つかる(決して万能ではない)。また、毎朝衣服や靴を身に付ける前によく振って確かめること。この方法はサソリやクモに対しても有効である。

毒蛇か否か

日本では、ハブ・マムシ(大きな斑点、攻撃的)・ヤマカガシ(首の裏が黄色い)が知られている。咬傷部に激痛・灼熱感・腫張・変色等の反応があれば毒蛇だといえるが、実際にはこの反応が出るまでに処置が必要であるし、反応の種類が限られていたり弱かったりもする。ヤマカガシ咬症は腫れや痛みが殆ど無い。その蛇が毒蛇か否か分からない場合は、毒蛇であると仮定して処置を始める。無毒の蛇でも破傷風に感染する惧れがあることに注意。

応急処置法

毒蛇咬傷の治療法については、混沌の中にある。様々な説・見解・出版物があふれ、扇情的表現に満ちている。しかし、原則的に行うべきことは明確である。すなわちそれは、毒素の量と体に回る速度を共に減少させることである。まず、出来る限り安静にする。次に、咬部切開・毒素の吸引・抗毒素投与の3つはセットで行われるべきもので、3つ全てを行うべきである。しかし同時に、充分な知識と技術が要求され、誤った方法や不正確な方法はかえって症状の悪化を招く。従って、処置法を述べたテキストには、初めから圧迫・切開・吸引を禁止するものも多く存在する。また、処置は素早く行うこと。当然の事なのだが守られない場合も多いようだ。常にショック症状を警戒する。脈が弱まり呼吸が浅くなりつつあるなら、あらかじめショックに対する方法をを準備しておくことが望ましい。

第1段階:消毒

咬傷周辺を水で流した後、消毒する。抗生物質入りの軟膏があれば、ガーゼや綿棒で塗布する。(この手順を絶対に省略しないこと!蛇の口は清潔ではない。破傷風の惧れもある。)

第2段階:圧迫(リスク有り)

腫張部より心臓に近い側を圧迫する。圧迫帯は幅の広いものを利用し、強く縛りすぎてはならない。圧迫帯の目的は、血行を妨げること(止血)ではなく、皮下組織の毒素の拡散を防ぐことにあるからだ。包帯を利用するのが最も良い方法であり、心臓に近い側から順に傷口まで巻いていく。圧迫帯より下(手足の末端)側で脈拍を確認する。弱い脈拍さえ無ければきつすぎるので緩める。

第3段階:咬部切開(大きなリスク有り)

消毒済みのメスで深さ5ミリ以内・長さ1センチ以内に直線的に切開する。この際必要以上の切開は感染症の危険や神経・血管・腱などの損傷を招くのみである。正確に行う自信が無い場合は、避けるべきだ。切開した場合は、その傷の処置も必要になる。切開については行うべきでないという説も有力。

第4段階:毒素の吸引

吸引には「スネークバイトキット」「ザ・エキストラクター」「ポイズンリムーバー」等の商品名で呼ばれる器具を利用する。(「スネークバイトキット」という商品は数種類存在するようだ。よく吟味して購入すること。)これらの商品は他の生物による咬傷にも有用である。吸引カップを利用して毒素を出来るだけ排出する。絶対に口を使って吸い出さないこと。医療機関に到着するまで続ける。医療機関まで徒歩で移動せざるを得ない場合は、出来ればゆっくりとした歩調で向かう。

第5段階:抗毒素等の投与(大きなリスク有り)

プレドニゾロン破傷風トキソイド、抗生剤、凝固因子、抗毒素血清等の投与は医療機関に任せること。抗毒素血清(を使用するとアナフィラキシーショックが約5%の頻度でおき、少ないながらもそれによる死亡例もある。そこで最近では、血清の代わりにセファランチンという薬剤を用いることもある。

第6段階:膨潤

膨潤が現れた場合は、膨潤より外側に圧迫帯を用いる。可能な場合は、最初の圧迫帯を残したまま、新しい圧迫帯を巻いて、その後古いものを取り外し、次にこのプロセスを繰り返さなければならない場合に備えて保存する。

その他

冷却療法は絶対に用いないこと。(但し、FM21-11では "place an ice bag over the area of the bite" とある。)
毒が目に入ったら、1秒でも早く水で洗い流すこと。20分以上は洗った方がいいだろう。
蛇を殺して医療機関に持っていけば同定が可能かもしれないが、あまり多くの時間をかけすぎないこと。このとき再びかまれる可能性も忘れてはならない。(特に日本国内では毒蛇の種類は少ないので同定は難しくはないだろう。)

Reference : FM 21-11 First Aid for Soldiers (Headquarters Department of the Army,Washington, D.C.,October 27, 1988)

(財)日本蛇族学術研究所
群馬県新田郡藪塚本町大字薮塚湯の入東3318 
電話  0277−78−5193
FAX 0277−78−5520

自然の中で http://shizennnonakade.hp.infoseek.co.jp/homepage/
やまねこ氏によるマムシ咬傷の事故報告や参考リンクがある。(相互リンク)

海外での情報
Venomous Snakebite: Emergency First Aid http://userpages.umbc.edu/~sjoshi1/mirror/snakebite.shtml
Snake bite(General Health Encyclopedia) http://www.healthcentral.com/mhc/top/000031.cfm

蛇の画像については「日本の鱗たち」参照せよ。

スネークバイトキット・ポイズンリムーバー
応急処置用具についてはgoogleのイメージ検索で "snake bite kit" を検索してみると良い。


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