生存術教書 How To Survive (サバイバル技術アーカイブズ)

野外活動基本原則

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サバイバル(適者生存)に最も重要な精神性

生への執着心と積極性
絶対に諦めない!生き残って帰ってからのことを考え続ける。不安に負けそうならば、無事救出される場面を想像する。後悔よりも、失敗から学ぼうとせよ。「生還する」という任務を達成するつもりで。

知識と独創性
馴染みのない地域・気象・動植物・野外活動に関する基本知識があれば有利。ただし、この基本知識はそのままでは使えない場合もある。応用するには創意工夫が必要である場合も多い。

判断力
迅速で正確な判断は、正確な情報とその分析から生まれる。その情報分析能力は、基本知識と経験に大きく左右される。論理的思考を心がけること。

体力と精神力の相関性
一般に、基礎体力が優れている者が有利であるとはいえるが、精神性を伴わない肉体は驚くほど脆い。実際、長距離を徒歩移動すると、体力に優れるはずの者が遅れをとることは珍しくない。逆に飽くなき執着心を持つ虚弱な肉体が予想外の持久力を発揮することもある。この様に精神性によって肉体的脆弱性を補うことも出来る。

体調の維持
現にある状況下でベストの体調を維持する注意深さは非常に重要な要素である。この体調の維持こそ、前述の執着心と積極性・知識と独創性・判断力を養う最も大きな目的である。

さて、以上のような精神性・体力を備え、適者になったときはじめて、生存が許される。大自然の厳しさとは、この適者生存のル−ルが、一切の妥協なしに万物に平等に適用されるというところにある。植物も動物も皆、このル−ルに従っている。人間も、決してその例外ではありえない。如何に頭脳を発達させたとはいえ、こと自然の中で生き抜くことに関しては、他の生物たちとほとんど同じ条件で闘わなくてはならない。動植物に対する人間の脆弱性を考えれば、文明の利器も粗末にさえ見えてくるのである。

根拠のない楽観的観測はやめる
サバイバル術が必要となる非常時の可能性を、頭から否定しないこと!それこそがあなたを油断させ準備を怠らせるものである。なにより、心の準備がなくては、非常時に対処することは不可能だ。さらに、限定的非常時の可能性も考慮するべきである。また、ここに述べることの中には、言わば頭の柔軟体操になる面もあり、こうした思考は日常生活でも生かされるべきだ。そうした思考からは備蓄や演習が生まれる。試行を恐れず、想像力を駆使すること。

米軍によるSURVIVALの法則

(米陸軍のマニュアルを元に筆者加筆) U.S.Army Survival Manual FM21-76

Size Up the Situation (Surroundings, Physical Condition, Equipment) 状況を認識判断せよ

まず、最悪の事態をも覚悟した上で希望をもつ。(難しいだろうが、自分を励ますのだ。)楽観は後で自分自身を苦しめることになりかねない。
次に簡単なシェルターを設営する。そこで状況やこれまでの経過などを基に計画を立てる。こうした行動自体が心を落ち着かせる。不安が薄れ自信が湧いてくる。出来るだけ冷静に、現在地・目的地の見当や今後の状況を焦らずに考える。見慣れない土地にいる事自体が大きな不安の種になりがちだが、持てる知識を総動員して考えることは、そうした不安を少しでも遠ざけるきっかけになる。
Use All Your Senses, Undue Haste Makes Waste 急いてはことを仕損じる、急がば回れ

不用意な行動は墓穴を掘るに等しい。時間が有っても無くても、苛立ちや不安からの性急な行動は自戒するべきだ。行動を起こすときは、一呼吸置いてから。ただし、ただ漫然と考えているだけでは、自覚する以上に怠惰になり、消極性を生み出す。小さな事からでも実行に移して、意欲を持続させること。
Remember Where You Are 今自分はどこにいるかを意識せよ

普段の行動様式は、現に今いる状況に適合するのかどうか検討してみる必要がある。
Vanquish Fear and Panic 恐怖や不安を抑制せよ

英語原文では「抑制せよ」となっているが、恐怖を感じるのは当然であり、むしろ必要でさえある。所謂「火事場のクソ力」、エネルギ−の源である。従って恐怖を認め、コントロ−ルすることか大切なのだ。状況をよく観察して、恐怖感が正当化するに値するものかどうかを見極める。こうしてよくよく己の恐怖心を見つめてみると、その殆どは根拠の無いことが判明する。ただし、負傷して激痛を感じるときは、恐怖をコントロ−ルし難い。痛みは恐れを増し、思慮分別を失わせる。また孤独感・絶望感もパニックを起こす。これらの兆候を意識することでパニックを避けられる。
Improvise 即席に作る

やるべき事は幾らでもある。何が必要か何が手元にあるか検討し、即席で必要なものを作る。臨機応変。殆ど全てのものが工夫次第で役に立つ。この作業自体が生きる気力を持続させる。不用意にものを棄てないこと。
Value Living 生活を尊重せよ

健康を維持する。ささいな病気や負傷でも、生き残るチャンスを大きく損なう。飢え、寒さ、疲労なども能率を低下させ、スタミナを減じ、注意力を失わせる。また、気力の低下も肉体的条件によることがある。危険のせいばかりでない。生き残って帰ってからのことに考えを集中すれば自然と逆境の生活も尊重できるようになる。
Act Like the Natives 原地民同様に行動せよ

現地の習慣に馴染むべきである。土地の人間は、危険な動植物・食用になるもの・地域特有の気象変化など、有益な情報を多く持っている。その上での彼らの行動であるから、奇異に見えても、どういった意味があるのかよく考えること。
Live by your Wits, But for Now, Learn Basic Skills いざというときは機知を働かせろ、しかし取り敢えず今は基本技術を学べ

サバイバルの基本技術を、反復練習し体で覚えていると、精神状態が不安定でも無意識に適切な処置が取れる可能性が高い。積極的に学ぶ姿勢で基本技術に取り組み、更なる知識を求めて普段から研究を怠らないこと。

その他

下着
下着は吸湿速乾性のものを着用。(商品名:ウィックロン・ダクロン・サーマスタット・ブレスサーモ等)絶対に綿製は避ける。汗で濡れたまま乾かないので夏山でも高度や風速によっては震えるほど寒くなる。

飲料水
水は生存する上で最も重要な必需品。熱帯地や砂漠では1日最低3.7リットルの水を必要とする。もっとも、寒冷地でも1日当たり1.9リットルの水分が必要。脱水症状は深刻な問題となる。節水の唯一の方法は、汗をかかないようにすること。必要に応じて水を飲むときも、衣服を身につけ外気熱を体から遮断する。衣服は汗が瞬時に蒸発して一時的に涼しさの効果を生むのを押さえ、発汗のコントロ−ルを助ける。日本でも川の水は汚染されている。浄水器を用いること。(浄水剤だけでは対処できないと思われる。)

外国軍出身者のテキストについて
海外の軍隊の元教官などが書いたテキストを参考にするときは日本の状況にあてはまらないことも多々あるので注意すること。特に動物をとるための罠は、日本では適用できないものが多い。(そもそも国内において野生動物を捕獲する必要が生まれる事態は想定しがたいが。)また、武器や薬物に対する法律も海外とは異なることに留意しなければならない。


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